仲直り

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「そういう夢を見ていたんだよ」 旅館に着く前にビールを飲んだせいか、連日の仕事の疲れが溜まっていたせいか 旅館に着くなり、大いびきで寝ていたらしい 「嫌だわ。気持ちの悪い夢」 さすがに夢のように俯いて口を聞かない訳では無いが、増改築を繰り返したような古い旅館に妻は不満顔だ 「夕食は美味いと良いな」 笑い掛けるも、やはりまだまだ仲直りとはいかないようだ 仕方ない。重いため息をついた所で仲居が夕食を運んできた 夢でも現実でも ため息が仲居を呼び寄せるらしい 夕食は豪勢なものだったが、質より量といった呈で妻のご機嫌を取り戻す程にはならなかった 「せっかくだから少し旅館の中を散策しないか?」 迷路のような造りに、昔のお化け屋敷のような郷愁を感じ妻を誘う 「悪趣味ね。私はお風呂に行きますから」 つれなく妻は言う 全く。女と言うやつはその場の空気を読んで楽しむと言う想像力が欠けているのか この旅行自体、いや、妻と結婚した事自体が間違ってるような腹立たしさを覚えた
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