仲直り

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結局、妻は地下の大浴場へ行くと言うので一緒に部屋を出る事にした 浴場へ向かう階段の昇りが行き止まりになっているのが、何処へ続いているのか調べてみたくなったのだ 「鍵は私が持って行きますね」 妻は此方を見もしないで階段を降りて行く 電灯の接触が悪いのか、ジジジと言う音の聞こえる薄暗い階段が危険だと思ったのか、妻の首がカクンと折れる 妻の体はちょうど腰くらいまでしか見えなくなっていて 夢で見た何かを思い出したような気がした 何だったのか 思い出しかけた時、前の廊下から仲居が歩いて来るのが見えた そうだ。仲居に階段が何処へ続いていたのか聞いてみよう 妻の姿は見えなくなっていた 「すみません。この階段。行き止まりなんですが、何処へ続いていたんですか?」 突然、尋ねられた仲居はちょっと驚いた顔をしていたが、すぐに営業用の笑顔を取り戻す 「四階ですよ」 この旅館は四階建てだったのか 「ならば四階に行くにはどうしたら良いのですか?」 「四階には行けません。昔、四階の部屋で首吊りがありましてね。それ以降、他の部屋からも変な匂いがするとか、物音が煩いとか苦情が出るようになってしまったので、四階全部を塗り潰して閉鎖してしまったんです」 仲居は首吊りの真似をして、首に手をやりクイッと上げる仕草をする 首がにゅうと伸びた気がした あぁ。その死体は発見が遅れて首が伸びきってしまったに違いない 「あの漆喰の内側には隙間なくお札が貼られてるらしいですよ」 伸びた首のまま仲居が笑った
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