仲直り

「そういう夢を見ていたんだよ」

連日の仕事の疲れが溜まっていたせいか、夕食の時に飲んだビールに酔ったのか

妻と大浴場に行った後、大いびきをかいて寝ていたらしい

「あら、嫌な夢。此処は四階なんですよ。気持ちの悪い」

妻は相変わらず。夢でも現実でも不機嫌なままだ

増改築を繰り返した古い旅館の古い部屋。不味くは無いが美味くもない料理。これと言った特徴もない地下の大浴場

確かに満足の行くモノでは無いが、仲直りの旅行なのだ

それに、この旅行に賛成したのは妻だって同じだ

薄暗い部屋で此方を見もせず、テレビを見ている妻に嫌気が差してきた

「ちょっとは此方を見たらどうなんだ。明日には帰らなければいけないんだぞ？仲直りの旅行じゃなかったのか」

言い終わらないうちに、妻はテレビと電気を消して布団に入ってしまった

こんな女の何が良かったのだろう

限られた中で楽しみを見つけ出す努力もせず、与えられる事を当然と思い、おまけに此方の気持ちにはお構い無しときた

布団に入って直ぐにぐうぐうと寝息を立て始めた妻を見て重いため息をつく

起こして喧嘩の続きをするのも億劫なので、諦めて布団に入った