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全員が地下一階に着いたとき、建物の揺れを感じた。その揺れは十秒ほどで治まったが、思いのほか揺れがひどかったようで、エレベーターが使えなくなってしまった。
「エレベーターが!」
「くっ…これでは脱出が…」
「いや、確か緊急時用の隠し階段があったはず」
病院に隠し階段。普通はそんなものはないのだが、この病院は普通ではないのだ。製薬会社エンブレムが、地下研究所に繋がる通路を偽装するための、エンブレムの息のかかった病院なのだ。
当然、医師たちの中にはエンブレムの職員も紛れ込んでいる。というより、街のほぼ全ての施設にエンブレムの人間が居るのだ。
このオルマール病院だけではない。警察署や下水管理局、空港関係者にも。この街は、エンブレムが牛耳っているのだ。とは言っても、この惨状ではその全員が生きているわけでもなく、その他大勢の市民たち同様にほとんどがゾンビ化したか、死に絶えた。
「隠し階段、そんなものが本当にあるのか?」
「あぁ。確か霊安室だ」
一行は、霊安室に足を運ぶ。ここは、遺体が安置されている場所だ。できればあまり長居はしたくない場所である。
「あったぞ」
ロッカーをどけ、現れたカードスロットに一人の医師がカードを差し込む。すると、壁が動き、扉が現れた。ドアノブを回し、押した。すると、隠し階段が現れ、カードを差し込んだ医師―アルバート―が一人先に下りていった。
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