第三章・死闘

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「よし…」 実験室の扉が開く。中を見渡すが、室内にあの男の姿はない。89式を構えながらゆっくり足を踏み入れる。その時、背後から殺気を感じ、前に転がる。すぐさま後ろを振り向くと、あの男が居た。 「なんだお前は!」 「………」 男は喋らず、藤原に近づく。じりじりと下がりながら、藤原は恐怖心を覚えた。こいつは普通じゃない。 「くそっ!」 男の脚に銃弾を放つ。5.56mm弾が男の脚を貫く。男は少しよろめくが、痛みに顔を歪めたりはしなかった。ただ真っ直ぐに藤原を見ている。 「何なんだよ…」 藤原はさらに反対側の脚に狙いを定めて撃つ。しかし、今度は銃弾は男に届かなかった。男は銃弾を回避した。近距離から放たれた弾丸を目視してから避けるなど、通常できるものではない。たとえそれが訓練を積んだ優秀な兵士であっても。 「なんてこった…」 藤原は驚愕する。先ほど弾丸を撃ち込んだ脚が、元通りになっているのだ。この男はもう人間ではなかった。 「何だってんだよ!」 藤原は少しやけになりナイフを取り出す。ナイフならあるいはと考えたのだ。 男は驚くべき速さで藤原の周りを回りだした。あまりの速さに、残像ができるほどで、男を完全に視認できない。
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