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「あぁ、俺の聞きたいことは聞いた。ありがとう。また明日」
俺は棒読みでそれだけ言うと、扉の方へ行こうとした。
「まだ、貴方のこと聞いてませんが?」
……駄目だったか。
内心、舌打ちしながら振り返る。
そこには、案の定柏木がいた。
翠と大樹は興味はあるようだが今無理に聞こうという姿勢は感じられない。
柚奈は……隅の方で俯きさっきから一言も発してないから分からない。
今更だが、翠と大樹が柏木から柚奈を守るかのような位置にいるのは気のせいか?
「何が聞きたい。ひとつだけ答えてやる」
「こちらはあれだけ情報を提示したのにですか?」
「あんなの調べればわかることだろう」
そもそも、俺にとって有意義な情報をくれたのは大樹だ。
「……まぁいいでしょう。では、あなたは何故そんなに詳しいのですか?」
自分が知らないことを俺が知ってたのがそんなに悔しいか。
“そんなに”と言われる程話してないはずだがな。
「お前等もそれでいいのか?」
確認の為、聞いてみると同時に頷いた。
でも、納得しきれてないのが顔に表れている。
どうやら他のことが聞きたかったようだ。
「俺が詳しいのは単に“裏”に長年関わって来たからだ」
どうともとれる曖昧な答えを残し、今度こそ邪魔されないよう素早く理事長室を出た。
挨拶はさっきしたからいいだろう。
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