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いつもよりは早いんだし、今から向かっても大丈夫かな。
「おはようございます」
ここまで来ておいて、何も言わずに来た道を戻るのは変だと思って、僕は神主さんに挨拶をした。
振り向いた神主さんは笑顔を浮かべている。
「おはよう。確か、今日は川に行くんじゃなかったのかい?」
「そうです。でも、その前に昨日お話をしてくれた神主さんに挨拶をしようと思って。」
神主さんは細い目を大きく見開いた。
「嬉しいよ。ありがとう」
そう言って、またいつもの笑顔に戻る。
「それじゃあ、川に行ってきます」
そう言って僕は神主さんにお辞儀をした。
それを見た神主さんは珍しく笑顔を崩した。
「ヒサシ君、ちょっとだけ待っておくれ」
そう言って、珍しく早足で歩いて行く。
そして、早足で戻ってきた神主さんの手には、五本のキュウリがあった。
「昨日の話、信じてないんだね。信じる者は救われるよ」
いつもの笑顔を浮かべながら、神主さんは僕にキュウリを渡す。
「ありがとうございます」
あの話を信じるのは難しいと思ったけど、何故だか僕はすんなりと受け取ってしまっていた。
「行ってらっしゃい」
僕が呆気に取られていると、そんな言葉をかけられる。
そうだ、待ち合わせ場所に行かないと。
「行ってきます」
そうやって決まり文句を返した僕は、笑顔の神主さんに手を降りながら、五本のキュウリを手に持って来た道を戻る。
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