SCENE3 消えた彼女

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   時刻は午前六時頃だった。 外はまだ薄暗い。 タキオは自室の窓を開けた。 窓の外は、ベランダになっている。 さらにその下が、瓦屋根になっていた。  窓を閉めて手摺りに足をかけた。 屋根の上に降り立つ。 滑らないよう、かつ物音を立てないよう、擦り足に近いような状態でそっと進んだ。 軒先まで来ると、慎重に階下の庭を覗き見た。 誰もいない。シンとしている。 それを確認すると、まずは右手に持っていた、授業で必要な教科書や筆記用具が入ったバッグを投げた。 庭に落ち、ドサリと音がする。 続いて自分も飛んだ。 高さは三メートルあるかないかだ。 高いが、飛べない高さではない。  
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