第一話 父と軍隊

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 気がつけば父は食べ終わっていた。  「ちょっと待って」  俺は慌てて残りのパンをほおばって言った。  「行ってくるわ」  父はそう言って外に出た。  「行って来ます」  俺も靴を慌ててはきながら言った。  「行ってらっしゃい」  わずかに母の声が聞こえた。  「ちょっと待ってくれよ」  顔をしかめながら小さい声で言った。  すると家の前に父の自慢の車が止まった。  白色で、なめらかな車体である。  俺は車の助手席に乗った。  車が急発進したので体が後ろにもたれかかった。  「軍隊って何をしてるか全くわからないよ」  俺が就く仕事は軍隊なのである。  しかも、父はその軍隊の一つの部隊を束ねる隊長さんである。  「主に訓練をしてるな」  父は自慢気な顔で言い放った。  「訓練の内容は?」  俺は即聞いた。  「すぐにわかる」  父は窓の外を覗きながら言った。  「ただ、思っている以上に訓練は厳しい。それは覚えとけ。あと、身分が上の人には自分のことを<僕>って言わないといけないと言うこと。あと……」  父はペラペラと完全に暴走しながら言った。  「わかったか?」  父はため息をしながら言った。  「はい、十分にわかりました」  俺は細目で何度もうなずいて言った。  「頑張れよ」  父は俺の顔を見て言った。  「着いたぞ」  俺は前を向いた。  そこには、周りを塀で囲み、正面に大きな門があった。  「ここか~」  俺は門を見上げながら言った。
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