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気がつけば父は食べ終わっていた。
「ちょっと待って」
俺は慌てて残りのパンをほおばって言った。
「行ってくるわ」
父はそう言って外に出た。
「行って来ます」
俺も靴を慌ててはきながら言った。
「行ってらっしゃい」
わずかに母の声が聞こえた。
「ちょっと待ってくれよ」
顔をしかめながら小さい声で言った。
すると家の前に父の自慢の車が止まった。
白色で、なめらかな車体である。
俺は車の助手席に乗った。
車が急発進したので体が後ろにもたれかかった。
「軍隊って何をしてるか全くわからないよ」
俺が就く仕事は軍隊なのである。
しかも、父はその軍隊の一つの部隊を束ねる隊長さんである。
「主に訓練をしてるな」
父は自慢気な顔で言い放った。
「訓練の内容は?」
俺は即聞いた。
「すぐにわかる」
父は窓の外を覗きながら言った。
「ただ、思っている以上に訓練は厳しい。それは覚えとけ。あと、身分が上の人には自分のことを<僕>って言わないといけないと言うこと。あと……」
父はペラペラと完全に暴走しながら言った。
「わかったか?」
父はため息をしながら言った。
「はい、十分にわかりました」
俺は細目で何度もうなずいて言った。
「頑張れよ」
父は俺の顔を見て言った。
「着いたぞ」
俺は前を向いた。
そこには、周りを塀で囲み、正面に大きな門があった。
「ここか~」
俺は門を見上げながら言った。
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