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今日は早めに登校し、教室にやってきた男子全員に勇気を出して声をかけたのだ。大河のために、宿題をみせないようにと。
ぼくは自分もずいぶん外向的になったものだなあと感慨にふけっていた。
これで大河はもう自分で宿題をやるしかない。
ぼくがほくそ笑んでいたそのとき、大河はあろうことか女子の方へ向かいだした。
「えっ」
ぼくはおもわず立ち上がる。
しかし、気軽に女子に話しかけ「もーしかたないなー」「今度なんかおごるからさっ」「えーほんと? やったー!」と、なんともうらやましい青春な会話をする大河を、唖然と見つめるしかなかった。
初対面の女子に気軽に話しかけるなどという高等技術を、当然ながらぼくは擁していない。
かくして大河は始業式の間に宿題を写し終え、居残りの刑から逃れ、嬉々として部活動へ向かうのであった。
つまり、ぼくの大河矯正計画第一回は失敗に終わったのだ。
そんなぼくの気持ちを知ってか知らずか、近頃大河はきちんと宿題をこなすようになっていた。
おそらく、去年留年しかけたことが原因だろう。まあ、よい傾向だ。
そうしてぼくの日常はそれといって語ることもなく、ただただ平凡に過ぎていった。
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