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それはゴールデンウィーク明けのことだった。
「じゃ、宇佐美さん、どうぞ」
黒縁メガネの文学青年、というとっつきにくい国語教師の担任、水谷先生の指示で教室に入ってきたのは、女の子だった。
長い黒髪が、彼女の歩に合わせて怯えるように揺れる。
俯いた横顔は消えてしまうのではと不安になるほど白く、弱々しい輪郭で。
まるで人形のように整った、静かな雰囲気の少女だった。
教室は自然と静まり返っていた。
「転校生の、宇佐美真帆さんです。宇佐美さん、自己紹介を」
宇佐美真帆と呼ばれた彼女が、一瞬その瞳に嫌悪感のようなものを表したことにぼくは気づいた。
宇佐美は長いまつげをわずかに震わせると、俯いたまま小さく呟いた。
「……宇佐美です」
水谷先生はそれ以上言葉を紡がない宇佐美に顔をしかめたが、明るい口調で拍手を生徒に要求した。
パラパラと気のない拍手が起こる中、ぼくは宇佐美から目を離せずにいた。
彼女の目は、どこか虚ろだった。
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