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 そのとき、無駄にでかい声がぼくらに向かってきた。 「大河、アップルパイ百円な!」  それはパンを両手に抱えた進藤翔太だった。 「おお、さんきゅ」  大河は進藤に頼んであったらしいアップルパイを受け取ると、ポケットをジャラジャラとならし、その中から取り出した百円玉をひとつ投げよせた。  進藤はいかにもスポーツマンらしい顔を歪めながらそれを受け取る。 「おまえ、そのポケットにいくら入ってんの?」  大河はさも興味なさげに肩をすくめた。 「さあ?」 「嫌味な奴」  進藤はわざとらしく舌打ちすると、近くの席から椅子を拝借してきてぼくの机にパンをおく。  サッカー部の進藤とは大河を通して最近話すようになった仲だ。  他愛無い話をしながら昼飯を食べ終えると、いつものように大河がトランプをとりだしてにやりとした。 「さて、今日もやりますか」  進藤もよしきた、というように力強く頷いた。
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