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部室棟は二年生の教室があるB棟の南側とつながっている。渡り廊下への扉を開くと、やわらかい風が前髪をさらった。
図書館と向かい合うようにある部室棟に入ると、軽音部がかきならすエレキギターの音がとびだしてきた。
そのころにはこの自信作がどれほど飛ぶのか、かなりわくわくしていた。
聞こえてくるギターに合わせて鼻歌を口ずさむほどに。
それにしても芽衣子の弁当は美味かった。
我が妹ながら器量よし、清楚で可憐。だれにでも優しく謙虚で、料理までうまい。
大河みたいな適当な男につかまらないようにぼくが守ってやらねば。
芽衣子は絶対に幸せにする。
そんな決意をしながら屋上へと続く階段を上っていくと、徐々に静けさが辺りに満ちてきた。
コツ、コツ、と自分の足音が規則的に反響する。人気のない空気は少しひんやりとしていた。
三階を過ぎるとき、ふと視線を感じた。が、気のせいだったようだ。そして上を見上げると、鍵の壊れた茶色い鉄扉が見えた。
ぼくは嬉しくなり、駆け足で階段を上がる。そして重そうな鉄扉をそっと押した。
風が首筋を吹き抜ける。
階段の薄暗がりから突然光のもとへと出たので、両目をしばたかせた。
そして光の中から現れたその姿に、ぼくは目を奪われる。
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