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ぼくは何か言おうと必死に口を開閉するが、わすれてしまったかのように言葉が出てこない。なぜか顔が赤くなってしまった。
すると、意外にも宇佐美が口を開いた。
「夢を、見たの」
ぼくは驚いて宇佐美の顔を見た。やはりそこにはどんな感情も読み取れなくて。
「どんな夢か、聞いていい?」
宇佐美の顔を窺いながら慎重に尋ねると、彼女は何も言わず屋上のフェンスの方へゆっくりと歩いていった。
宇佐美はさっきまで寝ていたのか。と思いながら、ぼくも宇佐美の方へ近づこうとした。
そのとき、
「だめ」
突然宇佐美が俊敏な動きで振り返り、近づくぼくを片手で制した。ぼくは困惑して立ち止まる。
「えっと……」
何がだめなのか。尋ねようとしたとき、宇佐美が伸ばした手が震えていることに気づいた。
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