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どうしてだろうか。ぼくに襲われるとでも思ったのか? それは、ひどく傷つく。
大河に言わせると、ぼくは草食系男子代表という称号を得るほどの奥手でびびりなので、宇佐美に何かをするという考えなど毛頭ないのだが。
「だめ、なの。あたしに近づいちゃ……」
ぼくは困惑しながらも、宇佐美の様子がどこかおかしいと思っていた。
どうやらぼくを怖がっているのではなく、近づかれるということを怖がっているみたいで。
「ごめん。近づかないよ」
ぼくは宇佐美とは反対側のフェンスまで行って、不器用に微笑んで見せた。
しばらくすると、宇佐美は落ち着いたようで、小首を傾げながら不思議そうにぼくを見た。
「君は……」
「あ、空池満月。マンゲツって書いてミツキって読むんだ。馬鹿みたいな名前でしょ。そらいけミッキー! ってよく友達にからかわれるんだ」
「そう」
宇佐美は少し微笑んだように思えた。気のせいかもしれないほど小さな変化だったが。微笑んだということにしておこう。
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