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 そのときだった。  この閑静な田舎町には似合わない、やけに生々しい衝突音が鳴り響いた。  ぼくは肩を跳ね上げ、衝動的に振り返ってしまう。見えるところに事故の痕跡はない。  だが、音はすぐ近くだった。たぶん大通りの交差点だろう。  ぼくの住む鈴鹿市は、似合わないといいながら、不名誉なことに事故の件数が多い町の一つにあげられている。まあ、事故が似合う町などないのだが。  ぼくは先ほどより深くため息をついた。  今度の白い煙は風にさらわれることなく、抜け出した魂のようにしばらくそこにとどまり、やがて消えた。  *  二年生になったぼくは、やはり大河と同じ二組になった。 「なんでそんな嫌そうな顔すんだよ」  前の席にドカリと腰かけ、やけにうれしそうな顔を向けてくる大河に、ぼくはまたため息をつくことになる。
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