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「だってミッキーまだ終わってないって言ったら来なかったろー? 最近かあちゃんが二人に増えたみたいで、俺やんなっちゃう」
「ミッキー言うな」
大河はぼくのことをそう呼ぶ。満月という名前が好きじゃないと言ったら、そう呼ぶようになった。
ぼくが嫌なのはミツキという音ではなく、満月と書く漢字の方なのだが、何度説明してもよくわからないときに浮かべる笑みを見せるだけだ。
「はいはい。もー、ミッキーの薄情もの! ほかのやつに見せてもらうからいいもんねーだ」
大河は舌を出してケチケチ文句を言いながら、ほかのクラスメイトのところへかけて行った。
ぼくはそんな彼の背中を余裕の表情で見送る。大河、ぼくを甘く見るなよ。
やがて予想通り断られて、泣きそうになる大河の声が聞こえてきた。
「えー、どうしてー。いいじゃん、ちょっとだけ!」
懇願するも大河はクラスの男子からことごとく拒否される。なぜかというと、ぼくが事前にそう頼んだからだ。
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