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にっこりとしたヒヅメは首を回し隣の子ども部屋の方を見た。
「もう、眠っちゃったか」
「はい。あの子達に何か用ですか?」
「いや……むしろ君の目の心配にね」
ヒヅメがちらりと向けた目線の先は勿論眼帯だった。
千里は曖昧に笑った。
「具合が悪いとかはないですし、魔力に変化もないですよ」
「センリは本当に現れなくなったの?」
千里は黙って頷くと、ヒヅメはため息混じりにそうかと応えた。
寂しげな顔をするヒヅメに、千里は困ってしまった。
そんな顔をさせるつもりはなかったのだけれど。
しんみりした雰囲気に耐えきれなくて話題を変えようとしたとき、パチリと空気が弾ける音がした。
音の在る方から真紅の羽根を散らしながらあしびが姿を現した。
元前女王陛下の“心臓”あしび。
ミヒャエルを討ち、“心臓”の任を解かれたが今も城内を意味もなく彷徨いている。
「どうした?」
ヒヅメが仕事用の顔になる。
何故か不満そうなつまらなそうな顔をしたあしびは後ろ首を掻きながら応えた。
「ウイ王女がお呼びだ第2師団団長」
長年城を離れていたせいか、王はカオンと決めているのか、あしびはウイを王女呼びしていた。
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