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苦笑していると、あしびの鋭い眼差しが此方に向いた。
「お前もだ千里」
「え?」
*
ひくりと頬を痙攣させるウイを、ツヅラは物珍しいと思った。
ウイの目下には片膝をついて頭を垂れる青年と、アイスブルーの瞳で真っ直ぐに見つめてくる人形。
「その人形がシンシアですって?アーツベルト、笑えない」
「笑えないもなにも…今先程ご本人の声をお聞きでしょう?」
「笑えないわ」
「私も笑えません」
アーツベルトは顔を僅かに上げて人形を痛ましげに見つめる。
同じように、難しい顔をしてウイは人形を見つめた。
「シンシア…魔法を使ったの?」
「いいえ、使ってない。使ってないの」
人形の口が動く。
魂を持った人形は、人の様にしなやかではないが、自分の力でしっかり動いていた。
人形がぶるぶると震えてまばたきのないその瞳から流れる筈のない涙が流れる。
ウイとアーツベルトはぎょっとしてシンシアに駆け寄った。
「シンシア様!?」
「泣かないのシンシア!あたしが何とかしてあげるから?!ね?シンシア」
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