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涙を堪えようと唇を噛むシンシアに、ウイはたまらずアーツベルトを見た。
アーツベルトはシンシアに夢中でウイの視線に気づかないようだった。
「ゲッカには話したの?まだ御健在よね?」
祖父のウロド将軍は既に亡くなっている。
だから、ウロドと共に将軍職を務めていた人物を思い出す。
相当高齢だが、ウロドとかなり歳が離れていたからまだ生きている筈だ。
アーツベルトは渋い顔をした。
「それが……年老いてヨボヨボの姿を見せたくないからと、重たい脚を引きずって家出したらしく…」
「またなの?!まだまだ元気ねあの人も!」
辛うじて生きてるような状態なのに、隙をみては家出をするゲッカの話は有名だ。
とろとろとしか動けないのに、これがなかなか見つからず、かなり遠い地で見つけたりする。
そういったタフで無駄に元気なのは、むしろウロドの方だと聞いていたのに、彼の方があっさり逝ってしまった。
だからウイはウロドの顔を知らない。
ノインがパタパタ羽ばたきながら近寄った。
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