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『医者に診せるか』
*
「で、私まで呼ばれる理由ってなんですか?」
ライナーから下りてフエに切符を渡した千里はあしびへ振り返る。
「医者だったらハクシさんがいるじゃない。私じゃ何も分からないよ」
「馬鹿。医者は城の医者に決まってる」
コツンと額を叩かれる。
地味に痛みを主張してくる額をこすりつつ赤くなる耳を隠した。
確かに自分に診せるなんて自意識過剰過ぎた。
「その医者が“これは呪いだ”と言った」
「呪い?」
ヒヅメの眉間に皺がよる。
「シンシアはいつも人形を持っている。その人形の瞳に魔法がかかっていた」
城内へ入ると出くわす団員が頭をさげてくる。
あしびへの礼、ヒヅメへの礼。
「その呪いだが、今の所誰もとけそうにない。そこで白羽の矢がお前だ」
「私?」
魔法使いの中でも、師団長のヒヅメやアリアの子ども隆哉達は他の魔術師より抜きん出ている。
とは言え若い彼等は世界や時代からみればまだまだだ。
「しかしお前のソレは資質、経験、想像力をまるで無視して得た力だ。その魔力は強大で、そんな魔術師は歴史を振り返ってもなかなかいない」
あしびの言いたいことが分かって足を止めた。
千里の気配に気付いたあしびが振り返る。
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