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あしびの言い方がとてもいやらしい。
遠まわしな言い方だった。
これは、“期待”や“信頼”なんかじゃない。
「たった五回しかない私の魔法を、さっさと使い切らせるつもりなの?」
危険だから。何時、暴走するか。
何時裏切ったり道を外して仇なすか分からないから。
これは―――形見なのに。
あしびは黙々と歩き続ける。
ぴくりとも表情の変わらない彼に千里は歯噛みした。
なんて人だ。
少し後ろをついて歩いていたヒヅメが千里を促す。
千里は下を向いて歩き出した。
*
「その瞳はだだの硝子に見えましたが、恐らく魔石だったのでショウ」
医者、シュウウはシンシアをアーツベルトへ手渡して眼鏡を取った。
190近くある身長の為か近寄るのが少し怖い。
新緑の髪がなかなか似合う中年男だ。
「もう魔石は死んでいますカラこれ以上の呪いや術はないでショウ。あとは解く方法ですガ…」
シュウウが意味ありげな目線を投げて寄越した。
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