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「辛くなったら、無理せずに教えて下さいね」
「あっ…えと、はい。頑張ります」
由鶴はグッと拳を握りしめると土を削りだした。
「あんまし無理すんなよ姫さん。腕折れたりしたら笑えねーから」
なんて言っときながらランクは笑う。
だけどシンシアは掘り進める場所を凝視していて、声が全く届いていないようだった。
からかいが聞こえておらず、つまらんと思っていたら、背中に冷たく固い物があたった。
急に感じた冷たい空気にぞわぞわする。
振り向かなくても分かった。
「口に気を付けることだランク。あまり調子に乗らないで下さい」
「お、おう、アーツベルト。すまねぇ」
「分かったら手を動かしなさい」
「ラジャ」
低い声に怯えながらランクは黙々と魔石探しを続けた。
その様子を黙って見ていた千里はシンシアを一瞥してからふぅと鼻を鳴らした。
アーツベルトはシンシアをかなり大切にしている。
それが主従を超えて、家族に対する想いのように感じていた。
「ねぇお姉ちゃん、これ違う?」
由鶴が白い石を差し出してくる。
受け取った千里はそのままシンシアへと見せてみるも違うと首を振られた。
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