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隆哉がふよふよ浮きながら「これは」と黒い石を見せてくる。
明らか違うと思ったが、念の為見せてみると案の定首を振られた。
隆哉がぷっくりと頬を膨らます。
だけど駄々をこねたりだとかしないでまた再び魔石探しを始めた。
『下の兄弟って、こんな感じなのね』
川の音に消されて聞き逃しかけた。
ぎりぎり聞き取ったシンシアの独白に土を掘る手を止める。
ぼろぼろ土を崩している彼女を眺めていると、感情の読み取れない瞳がこちらに向いた。
『私にはね、姉がいたの』
ドクン
彼女の告白に心臓が暴れた。
一瞬左目が痛んだ気がして眼帯越しに軽く擦った。
「…へぇ、お姉さんがいたんだ」
『うん。一年前病気で亡くなってしまったんだけど、双子の姉がいたの。セシリアって言うのよ』
「セシリア…」
名前を繰り返す。
その姿を想像しようと思ったら、ふとそれが叶わぬ事に気が付いた。
千里はシンシアの人形じゃない姿をまだ知らないでいた。
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