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魔天楼の中庭に立ち、巨大な扉の奥から現れる魔術師の切符や定期を確認していたアルテミヤは、魔法界からやってくる千里に笑みを浮かべた。
「お帰りなさい。アギトの様子はどうだったのかしら?」
「脱獄を狙ってましたよ」
ラクの付き添い付きでアギトの話し相手をしに行ってきた千里。
今はその帰り。
相変わらず電車の揺れは酷かった。
千里は冷たい風を受けてぶるりと身震いした。
ぼさぼさになってしまった髪を手で梳くと、普段は髪の毛で目立たなくしている眼帯が丸見えになった。
センリの魔力を継いで、限定で五回魔法が使えるようになった左目は橙色になっていた。
それを隠す為に、薬局に売っているような眼帯で隠していた。
「この目で俺を出せってしつこかった」
それを聞いてアルは口元を隠してクスクスと笑った。
「あと、私が男だったら良かったって話をした」
「あら、どうして?女の子は嫌?」
乗降客を整理し終えて、二人は魔天楼へ足を向けながら話を続ける。
「女より男の方が出来ることって多くない?体格とか身体能力とかで差がうまれるでしょ。男ならきっとしてあげられる事が増えると思うし」
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