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この動く人形が本物のシンシアそっくりだと言うけれど、思い浮かぶのは人形の姿ばかりだ。
想像力の無さに唸った。
「セシリアちゃんはどんな人?」
『えっと……祖父を尊敬していて、強い人に憧れていて、好奇心旺盛で…凄く内気だった私の手を引いて何度も屋敷から抜け出そうとしていたわ』
「へぇ、お転婆だね」
『うん…だけど、そんなセシリアを、私は――』
ざざっと強い風がふいて土埃が舞った。
目を瞑りやり過ごす。
頭上で隆哉の嫌そうな声が聞こえた。
風が止んで、乱れた髪を整えつつシンシアに「ごめん」と謝った。
「ごめん、今の風で聞こえなかった。なんだって?」
『……ううん、なんでもない』
シンシアは頭を振って作業を続ける。
少し気落ちしているようだったけれど、変に慰めない方がいいかと何も言わずに土にむき直した。
暫く魔石探しを続けるも、なかなか見つからず時間だけ経過していく。
すっかり飽きてしまった隆哉を千草と由鶴が交代で相手をしていた。
目的の品が見つからず、ランクは目に見えて疲れた顔をし、アーツベルトの顔も曇っていく。
「シンシア様、今日はこれくらいにしましょう。簡単に見つかるものではありませんし、そろそろ帰りませんと暗くなりますよ」
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