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千里がそう言う時は大抵兄弟の事を考えている時だ。
相変わらずのシスコンブラコン振りである。
「また隆哉君達の事で考えてるの?」
「あ…、まぁそれも間違いじゃないんだけど…」
苦微笑する千里にアルは首を傾げる。
魔力を持った事で千里の心が読み難くなっていた。
「私、進学しないで働こうかと思って」
それを聞いてアルは目を見開いた。
「高校…いかないの?」
人間には義務教育がある。
それは中学までだが、だいたいの人間が高等学校まで進む。
「なるべくお金はあった方がいい。隆哉は男の子だし、お金をかけてあげたい」
そう言った千里の顔は、自分の可能性を広げる為の勉学を諦めてでも、下の兄弟を育てる事の喜びが見てとれた。
まるで親のよう。
魔天楼の一室に入ると、中のあたたかさに千里はほうっと肩の力を抜いた。
「温かいものでも出してあげるわ。もうすっかり寒いでしょう」
寒いねといわないのは、アルが魔法でそう感じないようにしているからだろう。
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