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魔天楼に兄弟を預ける時にいる部屋はだいたいが決まっていた。
そこへ真っ直ぐ向かった千里は徐々に聞こえてくる声に笑みが零れた。
戸を軽くノックして開ける。
「ただい、」
「うわぁぁああああん!!」
千里の額に筆箱が直撃し、そばをゲーム機が飛んで行った。
紫、緑、赤の光が流れ、色んな物が飛び、色んな生き物が生まれ、色んな音がする。
耳をつんざく泣き声に部屋全体が震えていた。
額の痛みを無視し、たまらず両耳を塞いだ。
「邪魔すんなっていってんでしょーが馬鹿隆哉!」
「ああぁああ゛!くーちゃんのばかぁぁぁ!」
「や、やめて!いい加減にしてよぉ…もぉぅ!」
大泣きの隆哉と、ガチギレの千草と、苛立ちつつ泣きべそをかいている由鶴。
大がかりの兄弟喧嘩中らしく、千里の帰りに誰も気づいていなかった。
こーゆー時、一般人の私はどうして止めたらよいのだろう。
考えて、千里はある方法を思いついた。
すぅっと、胸いっぱいに息をすう。
「おやつですよ――――!!」
次の瞬間、泣き声、怒鳴り声、魔法がピタリと止んだ。
そして三人ともやっと千里の存在に気がついたのだった。
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