…好き。

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「なっ…なによもうーーっ!!」 嘆く私。 何に、だって? それは色々、だ。 自分。そして黒田と秋吉。すべてに嘆きたい気分…。 「いきなり何言ってんだよ」 横から声が聞こえてきた。 振り向く……と、秋吉だ。 「え、別に?」 「香川って、意外におもしれぇんだなー。あんましゃべんないかと思った」 「そう…ですか?」 「何で敬語なんだよ」 何で、と言われてもな…。 「いや…、何となく」 「ふぅん」 秋吉は適当に返事をすると、さっきから読んでいた小説に目線を落としていた。 自分から話し掛けといてこれって…、気まぐれな人だなぁ…―――ん? 「っあ!!」 秋吉の小説をよく見てみると、ホラー系の小説だった。 それも、今超人気の。 私はホラー系のものが大好きだった。 「何だよ」 「あ…ごめん。私もそれ好きだから…」 「え?あ、これ?」 最初は驚いていたけど、意外にも秋吉は普通に話してくれた。 そこまで怖い人じゃないのかもしれない。 「貸そうか?」 「え!?」 「何。嫌なわけデスカ?」 「いや、違う違う!」 冷たい表情をする秋吉。 私は慌てて否定した。 男子に本貸してもらうのなんて初めてだった。 だから、びっくりして…。 「ありがと」 差し出された本を、あたしはゆっくりと受け取る。 それを見た秋吉は、冷たい票所から一変して、 「ちゃんと返せよ」 と笑った。 結構良い奴…なのかも?
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