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「紗季・・・離してくれないと嫌い」
明日香は紗季に小さな声で呟いた。
すると、慌てた様子で紗季は手を離した。
「よし、いい子ね」
明日香が紗季の頭を撫でた。
紗季はとても嬉しそうな表情で教室を飛び出していった。
「朝から大変だな。猪原も・・・」
「吉田に言われたくないわ。お前、見るからに暇そうじゃない」
明日香は吉田和樹(ヨシダカズキ)の後ろの席に座った。
明日香が和樹の首筋を見ると汗が流れていた。
「暇って・・・さっきまで自主トレで10キロ走ったから動きたくないだけさ」
そう言いながら、和樹は青いタオルを取り出して、首筋の汗を拭き取った。
「朝から熱血バカね」
明日香と和樹が声のする方を向くと、制服の上着のボタンを全開にし、完全に着崩している茶髪でパーマをかけた女子生徒がいた。
「熱血バカで悪かったな!春川晶様」
和樹が皮肉の口調で言ったが、晶はフンと鼻で一蹴した。
晶は自分の鞄を机に置くと、明日香に近寄っていった。
「おはよう。明日香」
「おはよう。晶」
外から見るとただの挨拶だが、この時点で和樹だけが、逃げ出したいと思っていた。
両者の間から、火花が飛んでいるのが分かったからだ。
「今年は必ずアンタの席貰うからね」
「あら、毎年30点も離されてるのに?」
二人とも笑顔ではいるが、晶の顔は若干引きつっていた。
「見てなさいよ!!」
「いつでも、どうぞ。席は渡さないわ」
明日香が言いきると晶は自分の責任戻っていった。
「今年も見れるのか?頂上決戦を?」
「あ、慎之介。いつからいたの?」
和樹が前を向くと、爽やかな好青年がいた。
「今だよ。来たばっか」
「慎之介は勝負しねぇのか?」
慎之介は首を横に振った。
「あんな殺伐した高校生活送りたくねぇ・・・」
「校内三位がよく言うぜ」
「羨ましいか?校内85位さん」
「うるせー!!どうせ中途半端な順位だよ!!」
「うるさいぞ。校内85位」
明日香が小さな声で言った。
和樹は大きなため息をついた。
「校内3位と1位がいじめる・・・」
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