愛の結晶

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婦人はふぅ、とほんのり桃色をした唇から紫煙を吐き出し、それと同じ調子で私に言った。 「裸になりなさい」 私は戸惑った。しかし、女中がただならぬ顔でにじり寄るのを視界の端で捉え、慌ててすべて服を脱ぎ捨てた。案山子のように痩せっぽちな私の身体に婦人の視線が這い纏わる。婦人は私を観察をしているようだった。 「いらないわ。殺して」 婦人は紫煙を穏やかに吐いた。女中は大振りな鋏をしゃきんと鳴らす。 私は再び身の危険を察知し肌を粟立たせた。 「お言葉ですが」 私の喉から驚くほど静かな声が出た。 「お言葉ですが奥様、私を殺めればお支払いになられた金貨が無駄になってしまいますよ」 ぴくり、と婦人のこめかみが動いた。 「買われた分の働きはしますから」 私の口から漏れたのはただの命乞いであった。顔は平静を装いつつも、心は死にたくないと泣き叫びのたうちまわっている。 婦人はにぃ、と唇を吊り上げた。 私は命拾いをし、ここで働くことになった。
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