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貧乏籤
思い出される記憶。
その日、いつもより早く幼稚園についた私はレコードをいじっていた。
近所に住んでいたT君は教室の中を元気よく走り回っていた。
すると女の子が突然泣き始め、先生が近寄り話を聞くとT君がぶつかってきたという。先生は私に近寄り謝りなさいと言った。
私もT君なのである。
全くの濡れ衣であるので謝るのを拒むと先生は報復として朝礼中、みんなの前でずっと私を立たせた。
基本的に心の弱い私は悔しさに泣いた。それを見た先生は改心したものと思いもう一度謝りなさいと私に諭した。
私は謝った。なにもしていないが。レコードをいじっていただけだが。
その日我が家に初めてファンヒーターが届いた。
ファンヒーターは暖かかったが、この日を境になんとなく自分が悪者になれば世の中は丸く収まるじゃないかとひねくれ始めた。
子供ながらに傷付いたこと。
花いちもんめを最後の独りになるまでやらされたこと。
ちょっかいを出してきた同級生を小突いたらたまたま先生が見ていて、見えないところでやるお前は汚い卑怯なやつだとみんなの前で叱られたこと。
聖闘士星矢の蟹座は極悪人な上に弱いこと。
いつしかなんとなく希望は叶わないし、結局私は汚い卑怯な悪者なんだと、自分の中で決着をつけていた。
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