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「逆に『不完全で完璧なアリバイ』というのは成立はしているが明らかに少しおかしいところがある。コレは調べてみればすぐに分かるので不完全。しかし後で解明されるから完璧になる」
おお。そういうことか。なるほど面白い。気づけば自分はその女の子の推理を聞いていた。
「話を戻しますね。……では犯人は誰か。犯人は部外者です。店員を外した。しかも合い鍵を持った部外者。となれば犯行をする人物を限られてきます。店員の近親者、ないし店長。ないし鍵屋。店員の近親者ならば合い鍵を使って簡単に店内に入ることができますし、店長も同じ。鍵屋が入っているのはすぐに鍵を開けられるから」
でも今回は鍵屋はすぐに外れますね、と女の子は言う。
「その理由はいくら何でも目立つから。いくら鍵屋さんでも鍵を開けるには数分の時間がかかる。その間に誰かが来たら? 複数なら? いやいや、複数ではもっとダメ。鍵を開けるのに何で二人も必要になる? 勘の良い警備員や一般の人ならすぐに怪しんでばれる可能性がある。おまけに夜中。堂々と警備員の前を通るわけにはいかない。よって鍵屋は外れます」
すると残りは店長と店員の近親者か。怪しいのは近親者か。
「ここで一番に怪しまれるのは店員の近親者ですが彼らは外れます。なぜなら店員とのアリバイが彼ら無しでは成立できないから。よって彼らも店員と同じです。残るは店長、ということになります」
外れてしまった。しかしなんで店長がやる必要がある? 動機は?
「狙われたのは自分の店の宝石店。となれば横流しすれば良いだけ。しかも何かの保険に入っていたようですし、すぐに捕まるでしょう?」
と言って女の子の推理は締めくくられた。
俺は気づけばカツ丼を食べ終わっていた。勘定をした後、車に戻ってそのまま帰ったんだ。面白い話だったなと感慨を得ながらな。
翌日、ニュースを見ると本当に店長が捕まっていた。
ってな話なんだけどよぉ。どうだ?
「オチがついていませんねぇ。シュールに終わってますよ」
いやいや、こんな風に終わる小説もあって良いだろ? な?
「いや面会用の硝子越しに言われても……だいたいこれ、本当にあったことなんですか? ホントだとしたらかなりのニュースじゃないですか」
いや、俺が自首するとき、「私の事は秘密にしておいてくださいね」って頼まれたんだよ。理由? なんでも、
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