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「百人」
壇上に立った生徒は高らかに叫んだ。
「百人だ。最初の百人に私から就職祝い金として百……いや、二百万出す」
※――――
××高校の今期生徒会長は変わっていると評判の人物だった。
マニフェストは「有言実行」。その名の通り、生徒からの要望にはどんな些細なものにでも答えていた。
給水機が欲しいと言えば学内のあちこちに給水器を設置し、図書館を広くしてほしいといった要望があれば学校長に掛け合い、図書館のスペースを広くしたりした。
かといって、さすがに無茶な要望は通しはしなかった。「夏休みを増やせ」だの、「宿題を消して」などの要望には目をくれず、その時に上がった反対の声には、
「学生の本分は勉強だ。故に君らのその要望は怠惰の方向へ向かう。全員が全員、そう思っているとは限らないというのは分かっているのだが、その要望は通すわけにはいかない」
と、毅然として言うのである。
とかく、その生徒会長が言うには、
「学校は生徒のものだ。教師が勉強の手伝いをし、なおかつ生徒はそれに甘んじることなく自らその裾野を広げていく。そしてその環境が整っていなければ、学校での勉強は真の力を発揮されない。故に私は、今の私の代でできる限りの『よりよい学校』を作ろうとしている。生徒諸君。これに賛同するのであれば、ぜひとも私に一票を投じてくれたまえ」
生徒会長選挙に立候補する際、生徒会長はそういっていた。それのおかげか効果なのか、その年の生徒会選挙は他の立候補者には票は入らず、現生徒会長に票が投じられたのだとか。
歴代の生徒会、生徒会長といえば内申点を取るためだけの役職で、あまりやる気を起こしていない人物が多かった。
だからこそ、××高校の生徒は言うのだ。
「今期の生徒会長は変わっている」と。
※――――
「どういうつもりかね!?」
生徒会室には学校長、並びに教頭や事務の先生が押しかけていた。
主に言っていたのは教頭なのだが。
「あんなことを言って、就職内定が決まった生徒に、本気で二百万円出すつもりかね!?」
「ええ」
あっさりと生徒会長は言った。普通、学校長や教頭からこのような剣幕で話されればどのような生徒でも多少は怯むはずなのだが、それにたいしてにこやかに、平然と言ってのけた。
それがまた、教頭の怒りを買う。
「百人! 百人だぞ!? 百人に二百万なんて……どれだけの金額がかかるか……」
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