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光り輝く刀身に映った自身の顔が苦痛に歪んでいるのが分かった。ここは魔王城。対するは魔王。挑むは勇者。姿も形も違う両者が相対している。
黒い霧が魔王の城――世界に向かって広がっていくのが分かる。希望が薄れ絶望が渦巻いているからだ。既に魔王城の周辺まで闇が広がっている。
「生きてるかッ……戦士」
黒い闇に吹き飛ばされ、柱を貫いてなお止まらずに、広いスペースを跳ね回り、入口近くの壁へ半身ほど減り込んだ戦士の元に駆け寄る。
「…………」
返事は――無い。命があるのかも分からない。白目を向いて、口から血混じりの泡立つ液体を吐き漏らし、がっくりと脱力した彼の手から大振りの斧が取り落ちた。
『満身創痍だな勇者よ』
――その邪悪な声に振り返る。大気を切る小さな刃が空中で待機している。いつでもこちらを襲えるように――僧侶だったモノの得意な魔法だった。
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