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聖人が纏うような清い空気が一瞬だが魔王から放たれた。それはとてつもなく小さな『希望』。何故か自分に良く似た空気を放つ魔王に、勇者の剣は輝きを取り戻す。
ゆっくり、ゆっくりと地に立てられた剣を支えに血溜まりから立ち上がる勇者の体は、魔王の指摘したように満身創痍。
体内に残る魔力は酷く少なく、誰か一人を回復させられるほどの魔法は唱えられない。――肩で息をしながら勇者は自身の持つ最悪の魔法を唱えようと詠唱に入る。
燃え盛る魔力の炎でもなく、光り輝く魔力の雷電でもなく、白銀に閉じ込める魔力の氷でもなく、断ち切る魔力の刃でもなく――今から唱えるのは、自身を消滅させる代わりに全てに自身の生命力を分ける魔力の息吹。
死した者も負傷した者にも、自身の生命力を分け与え、生き返らせる禁断の魔法。それは自己の崩壊と引き換えに、小さな希望を蘇らせる唯一の光。
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