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『みすみす蘇生魔法を放たせる馬鹿はおらぬ。魔力の業火をお前に送ろう』
カタカタと人形を操るように、魔王の号令と同時に魔法使いの持った杖の先が紅蓮に輝く。杖の先端に渦巻く火炎が現れ、それはこちらに――真っすぐ勇者へと目掛けて放たれた。
燃え盛る火炎は陽炎を発し、魔王城の床を擦り、溶かすほどに巨大な太さを誇り、一本の火炎流の辺りを歪ませるほどの熱波を放ちながら、勇者を飲み込もうと息を巻く。息を巻いて、勇者に食らいつ――
「うぉぉぉぉぉぉ」
どのタイミングでもなく、まさにこのタイミングで戦士の咆哮が響き渡る。白く鈍く輝く白刃の斧が勇者の目の前に割り込む。
勇者を背に戦士は何を考えているのだろうか。答えは彼にしか分からない。ただ彼は無我夢中に、全身全霊の力で、目の前の火炎流に斧を振り下ろしていた。ただ唯一の希望を守るように。
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