魔王と勇者パーティー。

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何かが弾け飛んだ。お菓子の袋を踏みつけたら割れてしまった。そんな風な軽いパンッという音の後に勇者は暗い道を歩いていた。 いつから歩いていたのか認識出来ないくらい勇者の体に馴染んだ闇が、酷く全身に纏わりついて気持ちがわるい。ふと立ち止まった。そして思い馳せる。置いてきたままの仲間達を。 勇者なんてものは、ただの理想像でしかない。そもそも初めて魔王を討伐した時に戦っていたのは神から遣わされた天使でもなければ神本人でもない。 ただの人間。そうただの人間。ただ勇者という『最強の記号』を誰かに与えられ、それに呪われ封じられた存在。 つまり勇者であるのは『勇者』でなくても良い。そう考えた。簡単な、単純な話だ。倒した人間が勇者ならば別に勇者の末裔というだけの、ただの人間じゃなくても戦士だとか僧侶だとか魔法使いだとかでもいい。 ただそれだけの話。勝てない者が生き残り、そこに存在する必要などない。一人よりも三人。結果は明白だ。結論は出ている。 ふと光が見えた気がして、暗い道を歩いていた筈の勇者は振り返った。勇者の目には、もう光は見えない。ただ広がる闇の回廊を突き進んで、振り返らずに前に歩かされているだけ。  
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