出会い

4/5
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
最初はあんなに困惑していたのに…不思議とだんだん…この先輩が気になって…いつも意識してしまうもんで…顔を見るだけでドキドキしてしまって… 気がついた時には、私の目が常に先輩を探していた… 部員が1・2年生だけになった頃、ソフト部らしい練習にも慣れ、練習試合なんかにも出れるようになり、オヤツ効果と毎日の練習の賜で少し痩せ、体は締まってソフト部らしい逞しい下半身も形成されつつあった。 「次の練習試合から本郷にキャッチャーで出てもらう」 「は…ぃ?」 捕手の先輩の怪我で、急遽私がお尻を買われたのかキャッチャーに…って練習してないし…わかんないし… 案の定、試合後課題は山積み…特に盗塁を阻止できなかったのが一番悔しくて… 学校が半日の日ーーー 早く練習が終わり、私は瞳の協力で二塁への送球練習をすることにした。 「かわり、まだ練習か?」 野球部も練習を終え、上がってきた先輩部員達の中から、あの先輩が抜けて近寄ってきた。 「盗塁…止められないの悔しいんで」 「ふーん。手伝ってやる。俺ショートだろ?」 何?今の幻聴?…『おまえヘタクソ』って頭からバカにされると思ったのに… 「早くしろボケ!時間もったいない。ほら自分ピッチャーして」 私と瞳は『はい』と慌て開始した。 それからの先輩はいつもの先輩じゃなかった。 『どアホ!1塁から走ってくるのに3塁側に投げるな。遅れる!』『高い!もっと下』『捕ってから投げるまでが遅い!』 どんだけ投げたかわからない。 足も腕も笑ってる…でも…最高! 「ありがとうございました」 「最初よりはマシになった。友達にも礼言えよ。じゃお先」 そう言って先輩は笑って行った。 (きっと私…先輩のこと) 「好き…でしょ?」 振り向くと瞳がニヤリと微笑んでいた。 「ま、まさか!辻さんの彼氏なのに」 「顔真っ赤だよ。アレ、辻さん告白してフラれてたんだって」 (そうなんだ…) 「顔ゆるんでる」 「気のせい」 笑って片付けてる私の心で、先輩への想いがさらに大きく膨らんできた。 髪も伸び、初めて二つに結んだ日 「かわり…おまえって…犬みたいだな」 敬ちゃんは呆れ顔。私はこんなセリフでもお世辞で『可愛い』って言われるよりキュンとして嬉しかった。 でも、先輩との楽しい日はいつまでも続かない… 卒業ーーー 「おめでとうございます。お世話になりました」 前まで行ったけど、これが精一杯…
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!