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最初はあんなに困惑していたのに…不思議とだんだん…この先輩が気になって…いつも意識してしまうもんで…顔を見るだけでドキドキしてしまって…
気がついた時には、私の目が常に先輩を探していた…
部員が1・2年生だけになった頃、ソフト部らしい練習にも慣れ、練習試合なんかにも出れるようになり、オヤツ効果と毎日の練習の賜で少し痩せ、体は締まってソフト部らしい逞しい下半身も形成されつつあった。
「次の練習試合から本郷にキャッチャーで出てもらう」
「は…ぃ?」
捕手の先輩の怪我で、急遽私がお尻を買われたのかキャッチャーに…って練習してないし…わかんないし…
案の定、試合後課題は山積み…特に盗塁を阻止できなかったのが一番悔しくて…
学校が半日の日ーーー
早く練習が終わり、私は瞳の協力で二塁への送球練習をすることにした。
「かわり、まだ練習か?」
野球部も練習を終え、上がってきた先輩部員達の中から、あの先輩が抜けて近寄ってきた。
「盗塁…止められないの悔しいんで」
「ふーん。手伝ってやる。俺ショートだろ?」
何?今の幻聴?…『おまえヘタクソ』って頭からバカにされると思ったのに…
「早くしろボケ!時間もったいない。ほら自分ピッチャーして」
私と瞳は『はい』と慌て開始した。
それからの先輩はいつもの先輩じゃなかった。
『どアホ!1塁から走ってくるのに3塁側に投げるな。遅れる!』『高い!もっと下』『捕ってから投げるまでが遅い!』
どんだけ投げたかわからない。
足も腕も笑ってる…でも…最高!
「ありがとうございました」
「最初よりはマシになった。友達にも礼言えよ。じゃお先」
そう言って先輩は笑って行った。
(きっと私…先輩のこと)
「好き…でしょ?」
振り向くと瞳がニヤリと微笑んでいた。
「ま、まさか!辻さんの彼氏なのに」
「顔真っ赤だよ。アレ、辻さん告白してフラれてたんだって」
(そうなんだ…)
「顔ゆるんでる」
「気のせい」
笑って片付けてる私の心で、先輩への想いがさらに大きく膨らんできた。
髪も伸び、初めて二つに結んだ日
「かわり…おまえって…犬みたいだな」
敬ちゃんは呆れ顔。私はこんなセリフでもお世辞で『可愛い』って言われるよりキュンとして嬉しかった。
でも、先輩との楽しい日はいつまでも続かない…
卒業ーーー
「おめでとうございます。お世話になりました」
前まで行ったけど、これが精一杯…
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