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冬ーーー
恋人達には楽しいイベントが盛りだくさん…だが、はっきり言って今の私にはこの空気は嫌味だ。
「あらあら、どこの誰かと思えば、今じゃすぅ~っかりお幸せな瞳さん」
最近彼氏の出来た瞳が、デート前にお洒落して顔を出した。
「うわあ…カホ怖い…ごめんね。行ってくるね。ねえ、変じゃない?」
瞳がその場でくるっと回った。
「はいはい。可愛い可愛い。今の私に幸せオーラは嫌がらせだよ…なあんてね。気をつけて行きなよ。またどんなだったか詳しく教えてよね。本当に可愛いよ」
他のバイトの子達もクリスマスも正月もデートらしく…『お願い』なんて拝まれて…情けない感に包まれながら私はバイトを入れた…
「はあ?おまえ…クリスマスも正月もバイトかよ…」
この間、先輩は呆れた顔で言った。
「みんな…忙しいから…」
『仕方ないじゃない…文句があるなら誘ってよ!』なんて口が裂けても言えません。
少しは気の毒に思ってくれたのか、先輩はクリスマスにはお菓子のブーツを、お正月には初詣帰りなのかリンゴ飴を届けてくれた。
「餅食い過ぎてないか?」
「小学生の年賀状みたいなセリフ…そりゃ正月だから少しは食べますよ。今朝は5個」
「5個?どうりで…その腹見たら食い過ぎだろ」
先輩は私のお腹を指差し笑った。
私は充実していると思っていた。こんな日常でも…たまに会えるだけですごく幸せだと…
「いいかげん…はっきりさせたら?」
瞳が真剣な目で私に言った。
「何?」
「私…ずっとカホ見てきたもん。今のカホ…ホントは泣きそう」
「私は…私は…今の先輩との関係に満足してる…んだから」
私はそう言いながら…こみ上げてくる違和感を感じていた。
「嘘…先輩が卒業したあの時の方が、自分に素直だった」
「…」
そんなのわかってる…わかってる…けど…
「ねえ、他にもいい人いっぱいいるよ」
私は首を左右に振った。
「何故そんなに先輩にこだわるの?」
「好き…だから。ずっと…ずっと先輩が好きだから。私には先輩しか見えないから」
「もう…真っ直ぐ過ぎ…そろそろ、その想いをぶつけちゃいなよ」
こわい…
「でないと…いつまでもこのままじゃない?カホは本当にそれでいいの?」
「だって…」
「もうすぐバレンタインだし、一緒に作ろ?」
思いがけないお誘いだった。
「私…下手だよ…」
「だから一緒に…ね?バレンタイン頑張ってみなよ」
「…うん…そ…だね」
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