ラストチャンス…

3/6

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
冬ーーー 恋人達には楽しいイベントが盛りだくさん…だが、はっきり言って今の私にはこの空気は嫌味だ。 「あらあら、どこの誰かと思えば、今じゃすぅ~っかりお幸せな瞳さん」 最近彼氏の出来た瞳が、デート前にお洒落して顔を出した。 「うわあ…カホ怖い…ごめんね。行ってくるね。ねえ、変じゃない?」 瞳がその場でくるっと回った。 「はいはい。可愛い可愛い。今の私に幸せオーラは嫌がらせだよ…なあんてね。気をつけて行きなよ。またどんなだったか詳しく教えてよね。本当に可愛いよ」 他のバイトの子達もクリスマスも正月もデートらしく…『お願い』なんて拝まれて…情けない感に包まれながら私はバイトを入れた… 「はあ?おまえ…クリスマスも正月もバイトかよ…」 この間、先輩は呆れた顔で言った。 「みんな…忙しいから…」 『仕方ないじゃない…文句があるなら誘ってよ!』なんて口が裂けても言えません。 少しは気の毒に思ってくれたのか、先輩はクリスマスにはお菓子のブーツを、お正月には初詣帰りなのかリンゴ飴を届けてくれた。 「餅食い過ぎてないか?」 「小学生の年賀状みたいなセリフ…そりゃ正月だから少しは食べますよ。今朝は5個」 「5個?どうりで…その腹見たら食い過ぎだろ」 先輩は私のお腹を指差し笑った。 私は充実していると思っていた。こんな日常でも…たまに会えるだけですごく幸せだと… 「いいかげん…はっきりさせたら?」 瞳が真剣な目で私に言った。 「何?」 「私…ずっとカホ見てきたもん。今のカホ…ホントは泣きそう」 「私は…私は…今の先輩との関係に満足してる…んだから」 私はそう言いながら…こみ上げてくる違和感を感じていた。 「嘘…先輩が卒業したあの時の方が、自分に素直だった」 「…」 そんなのわかってる…わかってる…けど… 「ねえ、他にもいい人いっぱいいるよ」 私は首を左右に振った。 「何故そんなに先輩にこだわるの?」 「好き…だから。ずっと…ずっと先輩が好きだから。私には先輩しか見えないから」 「もう…真っ直ぐ過ぎ…そろそろ、その想いをぶつけちゃいなよ」 こわい… 「でないと…いつまでもこのままじゃない?カホは本当にそれでいいの?」 「だって…」 「もうすぐバレンタインだし、一緒に作ろ?」 思いがけないお誘いだった。 「私…下手だよ…」 「だから一緒に…ね?バレンタイン頑張ってみなよ」 「…うん…そ…だね」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加