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愛娘、ゆかりを遺して死んでしまった僕は成長するゆかりをほほえましく思ったし、
時にはゆかりが出会う悲惨な出来事に何も出来ない、ただ見ていることしか出来ない、そんな自分を呪った。
そんな時、僕の白い世界に凄く黒い空気を纏う、そんな人が来たんだ。
その人はあまりの恐ろしい、恨み?かな。
そんな空気をまとっていて、とても怖かったんだけれども。
僕とその人しかいないから…。
僕は勇気をだして声をかけた。
『こ…こんにちは…』
声が上ずってしまったが、そんな僕に構わず、その人は暗い闇の中に見える、いかにも悪そうな現世の人に手をかけた。
『ちょっと!!』
僕は止めようとしたのだが、現世の人は死んでしまった。
すると黒い人は突如現れた眩しい光に焼かれて消えてしまった。
『があああぁぁああ!!』
あまりの出来事に腰を抜かし、唖然とする僕の隣にはいつの間にか綺麗な人が佇んでいた。
漆黒を思わせる長い髪に透けそうな色の陶器の肌。
綺麗な海の底の色の眼をしている。
ここはどうも不思議なことがよく起きる。
が、綺麗な人は手のひらに先ほど黒い人を焼いた光を持っていたので僕は恐ろしかった。
その人は男とも女ともつかない声で僕に言った。
『お前、いつまでここにおる?』
『…む、娘が幸せになるまで』
『その娘は先、悲惨なことがあるぞ』
『その時は僕が守ります。』
『…ふむ。』
その人は親指と人差し指とでその華奢な顎を挟み、少し考えた様に言った。
『お前、さきの者が無くなったろう。あれが代償だ』
『…怖いですね』
『そうか。』
『あの人、どうなりますか?』
『永劫、焼けて焦げ続けるのだ。』
『………。』
言葉を失う僕にその人は無くなった人がいた辺りを眺めながら続ける。
『むやみに現世の者と関わるとああなる。』
『地獄に…落ちるってことですかね?』
『そう表現するのが、お前にはわかりやすいのならば、そうなのだろう』
相変わらず顎を指先で撫でている。
『代償にも、形は沢山ある。』
『え?』
『お前も受難よの。』
『え?え?』
『余も考慮しておくとしよう』
『…あなたは神様?』
『そう表現するのがお前にはわかりやすいのならば、そうなのだろう』
『……。』
再度、僕が顔をあげるとその人はもういなかったが神様、もしくは死神だったかもしれない。
-END-
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