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その頃、オフィーリアは同じ満月を見上げていた。
季節的には春なのだが、まだ夜の気温は肌寒い。そんな中、薄黄緑色のネグリジェにストールを巻いて、庭に在るテラスの中で一人座っていた。
基本的に彼女は人と接して過ごしている。しかし、たまにこうやって一人になりたいと思う時があるのだ。それも、ここ最近では増えてきている。
(最近胸の辺りがザワザワする・・・。)
今夜も、何か違和感を感じて自分の部屋からここへ出てきたのだ。
テラスには、沢山の観葉植物が植えられている。その真ん中には、談笑出来る様、テーブルと椅子が数脚用意されている。
そこに、ちょこんと座っているオフィーリアは、月光の反射で銀髪がキラキラと輝いている。物思いに耽っているその姿は、とても優雅で気品があるが、可愛らしさも十分にあった。
リュリシンが見たら、親バカを存分に発揮するだろう。
オフィーリアはじっと月を眺めている。
昔から、月にはカトライナの守護神である麒麟が住んでいると云われている。
以前聞いた話によると、麒麟は初代国王グルディール王にしか姿を見せていないらしい。古い言い伝えなので確証はないのだが。
しかし、麒麟は神の一人である。その麒麟が姿を現すということは、何か重大なこと、革命的なことがカトライナに起きるのでは、とオフィーリアは考えている。グルディール王の場合は、新しく王国が出来るかどうかといった重大なことだった。それからと言うもの、今まで隣国とも良い友好関係を築けているので平和だ。カトライナには不穏な事が無かった。だから、麒麟は今まで姿を見せなかったのではないだろうか。
だからこそ、この胸騒ぎが気になってしょうがないのだ。
(・・・ふう。少し考え過ぎかしら。最近、難しい事ばかり考えていたから、きっと疲れているのね。)
そう考えると同時に軽く頭を振った。
オフィーリアは、隠されてはいるが王太子である。これが、貴族でなければ問題では無かったのだが、ウンディーネ家は名門中の名門。
勿論、政治関連までとは言わないが、学問・武術は普通以上に教えられる。
実際のところ5歳からの事を、彼女自身3歳から学んでいるのだ。
思考が大人びているのも頷ける。
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