1、 聖なる光に忍び寄る闇

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同じ頃、王城の中で一人笑みを浮かべる女がいた。言わなくても分かるだろうが、王妃シルヴァールである。 彼女は、この日を今か今かと心待ちにしていた。 只でさえウンディーネ家は目の上の瘤である。唯一、王族に意見を言える立場の名家中の名家。そんな中から王太子が出てきたものならば、その立場は確固たるものになるだろう。 それに比べて、自分は中級貴族。たまたま先王妃が亡くなり、現国王の目に留まったのが自分である。勿論、この国のしきたりは分かっている。自分の息子はオフィーリアより年上。息子が生まれても、四龍は祝福に来なかった。つまりは、王としての器がなかったのだ。頭では理解していても心はそうはいかない。とどのつまりは、『嫉妬』と『プライド』。 確かに、息子には器はないかもしれない。だが、現王は年配だ。不謹慎だが、いつ病気等で崩御してもいい年齢なのだ。 今までは、そんな頃に図ったかのように次の王太子が現れる。今回もそうだった。だからこそ、彼女を消し去れば自分の権限・派閥で自分の息子を王に出来るだろう。今までにはない前例かもしれない。国が傾いてしまうかもしれない恐怖もあるが、だてに王の傍らで政治を見てきてはいない。自分が息子を支えていってあげよう。そして、近年勢力をつけてきた隣国・サルマール国ともパイプをつくってある。 安定した政治を見せつければ、四龍も何も言えまい。 そしてなによりも、血だ。自分と同じ血を分けたものに王位を継いでもらいたい。いや、そう言うと息子想いの母親になってしまうだろう。本音を言うと、後世に自分と同じ血を残したいのだ。 だから今夜、なんとしてもオフィーリアを亡き者にしなくてはならない。 シルヴァールは、無意識に眉間に皺を寄せ、自分の手をそれこそ血が滲むのではないかというくらい強く握りしめていた。 時を遡ること数時間前、王国の中心地にあるサファール平原にドゴールを筆頭とする4人の守護者が集まっていた。
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