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『アーデル様!アーデル様!オフィーリアは?お元気ですか?』
二人、もといキールとカイルは、部屋に入る否や声を張り上げた。
部屋の中には、金色の髪に緑の目をした美しい女性と、目を瞑った銀髪の男性、そして、女性の膝の上でスヤスヤと眠る銀色の髪をした女の子がいた。
流石に我に返った二人は、深々とお辞儀をした。
「アーデル様。突然の訪問をお許しください。ここ数日オフィーリア様をお見かけしなかったのでいてもたってもいられ・・・」
兄のキールが訪問の理由を話していると、くくくっと喉を鳴らす笑いが聞こえてきた。
二人が声の方を見上げると、アーデルと呼ばれた女性が悪戯な笑みを浮かべて二人を見ていたのだ。
「たった3日でこの様に急いて来るとは。よっぽどオフィーリアが好きなようですね。」
そう、アーデルはこの状態を楽しんでいるのだ。
(しまった・・。)
二人はとっさにしかめっ面をした。アーデルは、わざと二人と愛しい我が子を会わせないように仕組んでいたのだ。
こうなっては、アーデルの勝ちだ。彼女が飽きるまで、この話題で笑われるだろう。しかも、たった3日で我慢が出来なかったのだから、尚更だ。
二人が面白くなさそうにしていると、アーデルの横にいた男性が話しかけてきた。
「まぁまぁ、落ち着きなさい。今回は妻が悪かった。そんなに機嫌を損ねないでくれ。」
優しい声で話しかけるこの男性こそ、アーデルの夫でこの家の主。リュリシン・ウンディーネ公爵である。公爵と言えど、ただの貴族ではない。国王と並んで意見を言える程、最も高位な貴族なのだ。
キールとカイルは、アーデルの妹の子供。つまり、甥にあたる。オフィーリアとは従兄妹同士だ。
ずっと男兄弟で暮らしていたのだから、妹のように思えるオフィーリアは可愛くて可愛くて仕方なかった。だから、今回のようにしてしまう事が多々起きてしまう。
周りから見てみれば、三人とも本当に仲が良く微笑ましい姿なのである。
しかし、本当は只の従兄妹ではない。いくら甥にあたるとしてもウンディーネ家と兄弟の家アルバート家では位が違う。当然のごとくウンディーネ家の方が上である。キールとカイルはリュリシンから頼まれ、オフィーリアに仕えているのだ。
端からは、ただの従兄妹溺愛兄弟にしか見えないのだが。
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