1、 聖なる光に忍び寄る闇

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「あの王妃が黙って4年もオフィーリアを野放しにしていたとは思えぬ。」 最愛の娘を遠目で見ながら、リュリシンは呟く。 それに同意するかの様にアーデルも頷く。 「彼女は、自分の息子フィリプスを王位に就かせたいと思っているはずです。来年にはオフィーリアの存在が国中に知らされる。そうなっては、手出しが出来なくなります。何か事を起こすとしたら、この誕生会が最後の機会でしょう。」 そう、リュリシン達が危惧している事はこの事だったのだ。 『現王妃は、息子を次期国王にしたいと考えている。』 そうウンディーネ家には情報が入ってきている。 地位を手放さない一番の方法は、自分の息子を国王にすることだ。その為には、四龍の加護を受けたオフィーリアが邪魔なのだ。 しかし、公爵令嬢という肩書きがあるため、そう易々とは手を出せない。だが、時間も無い。王妃は今焦っているだろう。焦ってはいるが、冷静な人なので下手なことは打ってこない。だからこそ、アルバート兄弟に念を押しておいたのだ。 二人はまだ子供だが、元々の才能とオフィーリアを守りたいと言う気持ちが強く、血の滲む様な努力をしてきた。その甲斐があって、今ではそこら辺の傭兵では歯が立たない程力をつけている。そんな二人が傍にいてくれたら、少なくとも安心だ。後は、自分達大人が根回しをして、最悪な結果にならぬ様にすればよいのだ。 (どうか、三人に麒麟様の御加護があります様に) そうアーデルは心の中で呟いた。
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