1、 聖なる光に忍び寄る闇

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外では木々が風に揺れ、梟の鳴く声がしている。空を見ると綺麗な満月が輝いている。月の位置的に真夜中なようだ。 そんな中、とある古いお城の一室で2人の人間が話している。 一人は煌びやかな衣装を身に纏った女性で、もう一人は黒いマントを頭から被っている。フードを深く被っているので、顔ははっきりとはしないが、身長やガタイから予測すると男だろう。 「忌々しい公爵令嬢だこと。彼女がいると、我が一族の血筋が王家に残らぬではないか。我が息子、フィリプスこそ次期国王に相応しいはずなのに。そうであろう?ソロモン?」 明らかにオフィーリアに対して悪意の篭った目でマントの男―ソロモンに話しかける。 「当たり前でございます。今までは公爵家という肩書きで守られてきた故、手出しが出来ませんでした。しかし、今回令嬢を始末しないともう機会は無いでしょう。最初で最後の勝負です。その為に、我々も長年策を練ってきたではありませんか。」 そう、リュリシンが懸念していた通り、王妃側もこの時を待っていたのだ。 「しかし、いくらなんでもウンディーネ家を滅ぼすことは出来ぬ。あそこは特別なのだ。それに、四龍公達に気付かれてはいないだろうか?まだここ、王宮にいるんだろう?」 「四龍公達はご心配いりません。令嬢の誕生日の数日前から、彼らの領地で私の部下が暴れます。派手に暴れさせるので、彼らは帰らざるをえない。 龍と云えど神ではありません。そこを逆手に取ってしまえば、王都から離れさせることなど、造作もないのです。彼らが近くにいなければ、策はほとんど成功したものです。ご令嬢の命など簡単に手に入れることが出来ましょう。」 王妃は、『ほう』と口の弧を上げる。 「それに、いくら彼らが王国の守護者としても、我が国の神官の力を持ってすればこの王宮にて密談すら可能なのですよ。カトライナ王妃、シルヴァール様。」 「流石、サルマール国一と言われている神官ソロモン殿ですね。しかし、その策とは詳しく知らないのですが・・。まぁよいでしょう。彼女さえいなくなるのでしたら。あぁどうでしょう。少し早いですが、簡易な祝杯は如何ですか?我がカトライナとサルマール国との友好を祝して。」 二人はワインを片手にこれから起こる惨劇を心待ちにしている。 勿論、この二人の会話は誰にも聞かれる事は無かった。 ただ、窓から見えていた満月のみが知っている。
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