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テレビにはゾンビが人を襲うシーンが流れている。
隣りでは画面を凝視しながら、鍋の具の白子を美味しそうに食べる彼女がいる。
俺は白菜とつくねを少し食べただけで箸を置く。
「どうしたの?全然食べてないけど。」
「まだ酒が抜けてないみたい。もう少し落ち着いたら食べるよ。」
「そう。味は大丈夫?薄くない?」
「ちょうどいい。お世辞抜きに美味しい。」
「ふーん…」と言いながらも、まんざらではない彼女の表情を見て俺はホッとする。
実はインスタントラーメンを食べてから3時間も経ってなかったし、二日酔いの状態でゾンビ映画を観ながら、白子などが入った鍋を食べるのは俺の精神力では少し耐えられなかった。
でも彼女の鍋の味は抜群に旨い。
さすが居酒屋で働いていただけあって、材料の組み合わせや味の組み立て方は非凡なものがあった。
映画鑑賞が終わったら一気に食べよう。
彼女の横顔を見ながらそう思った。
‥
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