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何はともあれ俺には荒ぶるゴリラ(見た目は金髪美少女)と遊ぶ趣味は無い。 素早く左右に目を走らせて逃走経路を探す。
倒す? 無理無理、野獣に武器無しで勝てる訳がない。 え、ショートソードのジョー? ……誰それ、俺にはそんな知り合いはいないな。
リリアは俺を『到達者』とか言うけど、そんなの有名無実、何の助けにもなりはしない。
幸いこの修行場と言う名の草原は草原なので、逃走経路は前後左右無数にある。 しかし逆もまた然り、しかも隠れ場所が無いと来た。
つまり純粋に足で逃げ切るしかない。 しかし相手は身体能力に特化した『ソードマン』タイプのリリアだ、スリャイム級な俺では煙玉とかが無いと到底逃げ切れる気がしない。
まぁ、無ければ代用すれば良いのだが。
俺は素早く懐と腰のポーチに手を伸ばして二つの物を取り出し、その内の一つをリリア目掛けて投げつける。
「えっ? きゃあっ!?」
ヒット。 投げつけた物体X……ではなく、所謂『う○のふん』がリリアの足元の地面に命中して異臭を撒き散らす。
いや、流石に直接なげつける程俺は鬼畜じゃないですよ?
「お次はこいつ、っと」
何かを投げつけられた、凄まじい異臭、二つのファクターによって一瞬とは言え俺から意識を外して足を止めたリリアに、今度こそもう一つの取り出した物を投げつける。
それは主に台所に住まう悪魔。 機敏な動きと漆黒の体で見る者を恐怖のどん底に突き落とす邪の化身。
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁあ!!」
その悪魔の死骸が封じ込められた透明な袋がリリアの顔面に命中し、リリアが恐怖に悲鳴をあげている隙に俺は戦略的撤退を開始していた。
うむ、これなら逃げ切れそうだ。 俺は内心で自分の手際の良さに感心していた。
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