ものほしげな女

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「ちょっと!あなたねぇ!」 涼子が、たまりかねたように言った 「ひどい!」 莉沙も言った 「なにが、ひどいんだよ。 初対面で、人の顔と身体 ジロジロ値踏みするみたいにガン見して ちょっと声かけたら、ホイホイ ものほしげに ついてきたんだろ。」 …ものほしげに ホイホイ‥ そんな風に思われていたんだね… ‥ホイホイ…って なんて‥さもしい響きだろう‥ 「借金、踏み倒しといて なに偉そうに言ってんのよ!」 涼子が、呆れ顔で言う。 「だから、利子つけて返すつってんだろ。 後腐れなっても、面倒だからな。」 「‥お客様、もうそのぐらいになさっては 如何でしょうか? 他のお客様のご迷惑になりますので。」 バーテンダーが、丁寧な口調だが、厳しい目をしていさめた。 「言われなくても、こんな店で飲まねぇよ!」 男は、後ろに待たせていた女の肩を抱くと背を向けた。 「えーっ、おいしいカクテル飲ませてくれるって言ったじゃん。」 いかにも軽ーい女の声が、 ‥どんどん遠くなっていった あんな女を、 一緒によくきた思い出のある この店に連れてくるんだ‥
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