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―――だが、その幸せも儚く散った。
数ヶ月前、突然この村が魔物の集団に襲われたのだ。寒冷期から繁殖期への移行による魔物の大移動……知識のある者がいればこの村がその大移動の進行ルートにあることがわかったかもしれないが、残念なことにこの村はまだ出来たばかりで、知識を持つ者はおらず、当然、少女がそれを知っているはずもなかった。
村人たちはすぐに避難壕へと立て篭ったが、しかし中に力の強い魔物がいたのか、抵抗も虚しく散った。少女の両親はその時に死んでしまったのだ。少女が生き残ったのは、両親が隠し倉庫に少女を隠したからだった。
この地域は一年を通して寒さが厳しい。少女は、薄汚れたボロボロの布を身体に巻いて寒さを防いでいた。もう何ヶ月間も風呂に入っていないから、顔も汚れている。大きな瞳が特徴的な可憐な容貌も台無しだ。
「……お腹、空いたな……」
少女は痩せ細り、顔色も悪かった。目の下に隈もできている。四六時中、魔物がまた襲ってこないか怯えているからだ。
パンと牛乳が欲しくてたまらない。暖かい部屋で、柔らかい毛布にくるまって眠りたい。両親に逢いたい―――。そんな叶わないであろう夢の数々が、少女の脳裏をよぎっては消えていく。
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